それでは聴いてください

フリートークからの曲紹介に繋げるラジオ形式のブログ

ブラジャーコンプレックス 〜母の「お前には必要ない」を真に受けた女の末路〜

お題「これって私だけ?」

 

一人カラオケ、一人カフェ、一人ラーメン…全部余裕。でも下着屋には行けない。

 

デパートやショッピングモールの、老若男女が通りがかる場所に平然と設置される下着屋。

店の外から中までずらりと並ぶ、ブラジャーという乳房の象徴が強烈な女性性を発していて、私はそれに目眩がする。そして何より、自分もその整列したおっぱいの一員であるということに、どうしても違和感を持ってしまう。

たとえるなら、初めて制服やスーツを身につけるときの戸惑いに似ている。

 

本来ならば、性に関する事柄は歳を重ねるにつれて恥ずかしさが薄れていくものである。

ただし、いわゆる思春期に適切なケアを受けていればの話だ。身体が大人へと成長する過程で、持って生まれた性別の特徴が少しずつ現れ始めるとき、誰しも最初は戸惑いを覚えるが、恥ずかしいことじゃないのよと保護者や周りの人間が教えてあげることで、だんだんと自分の性を受け入れられるようになってくる。しかし、もし身近な人間例えば保護者などが余計に恥ずかしさを助長するような言動をとるなどすれば、根強いトラウマになったり、自らの性を受け入れられないまま成人して、いろいろと拗らせてしまったりする。

 

##

私は元々身体が小さく、成長も遅かった。高校に入ってもベージュのフニャっとしたスポブラしか与えられていなかったのは、自分にはまだ必要ないからだろうと思っていたし、同級生がしているようなワイヤー入りのブラジャーを欲しいと思ったこともなかった。しかしある時、おばさんみたいな下着しか持っていない私を同級生が見兼ねて、安い下着屋さんに連れて行ってくれた。サイズは適当だが見た感じでAだということになり、アンダーだけはいつ測ったのか忘れたが、ちゃんと数字を把握していた。

「これなんか清楚な感じでいいんじゃない?」とアドバイスをもらいながら購入したのが、人生初のおブラ様だ。

 

そして帰宅後、下着を購入したことを恐る恐る母に打ち明けると、

ニヤニヤしながら「え〜wwwいらないでしょwwww」という反応。

友達に勧められたとは言いづらかったので、部活(ダンス系)でノースリーブの衣装を着るときに紐が外せる下着が必要だったんだともっともらしい理由をぶつけてみたけれども、母のニヤケ顔は止められなかった。

「だいたいこの(付属の)化繊のパンツ、あんた肌弱いんだから履けないでしょww」

それを言われるとグーの音も出ない。

 

「・・・これあたし履こう!!」

 

え、あなたが履くの?私と同じく肌の弱いあなたが??だったら私が持ってればよくない?と思ったけれども、反論できずにいたので、付属のパンティーだけ大人しく没収された。

 

その翌日だったか数日後だったか忘れたが、母の職場に遊びに行ったとき、母が同僚女性のSさんに、私が自分で下着を購入してきたことを笑いながら話した。

「っていうか、パンツは綿が一番ですよね〜Sさん?」

「ん〜・・・まあ、そうですねぇ〜・・・」

Sさんは真面目で大人しい方だったので、母に反論をぶつけるようなことはしなかったけれども、内心混乱していただろうと思う。

こうして私の、ブラジャーに対するコンプレックスが生まれた。

 

 

購入して2週間くらい経った頃にまた不機嫌そうな顔で、お前にブラジャーなんて必要ないと言われたのだが、しばらくすると紐が外せるタイプのブラを2つ買ってきてくれた。部活で必要なので助かったが、デザインは小学生みたいだし、サイズも小さく、それをつけた日は胸が小さくなってしまっていたけれど、カップ数が間違っているからだという発想には至らず、きついブラとおばはんブラを交互につけながら3年間を過ごした。

次に自分で下着を買ったのは高校卒業後だったのだが、あるとき、ブラジャーをつけていると胸が苦しいということに気がついた。そこでカップ数をワンサイズ上げてみたのだが、それでもやはり馴染まなかった。

通常であれば、その時点でお店の人にサイズを測ってもらうか、更にワンサイズあげるなどするだろう。ところが私が出した結論は、

ああ、自分にはブラジャーつける資格ないんだ。

だった。

とはいえノーブラというわけにはいかないので、それから数年の間はノンワイヤータイプもしくはブラトップに逃げていた。どちらも、サイズ展開がS・M・Lなので、いちいち自分の、コンプレックスだらけの身体のサイズを数値化しなくて済む。

ちなみに、ノンワイヤーでもおしゃれなデザインのものが、苦手なタイプの下着屋さんのワンコーナーに置いてあるので、ブラジャーをつける資格のある女性達の脇を静かに通り抜け、選んでいた。進学校の落ちこぼれクラスに通っているような気分だった。

 

私はずっと自分の胸はBカップだと思っていたんだが、

「受理子、CかDはあるよ」と数人の友人に言われるようになったので、社会人になってから初めてお店での採寸を行った。

ある店ではCと言われ、またある店ではEと言われた。Cだと少しきついので真ん中のDなんだろう。

こうして正しいサイズがわかり、数年ぶりにワイヤー入りのブラジャーを手に入れた。

 

ところが、そのブラジャーは2回程度しか使わないうちに自宅で消えた。

せっかくワイヤー入りを買ったくせに情けない話なんだが、以前母がワコールのブラジャーからワイヤーを抜いて使っており、その抜き方が上手だったので依頼してみたのだ。預けてから二度と戻ってこなかった。不思議なことに、付属のパンツも同時に消えていた。

「間違って捨てちゃったかな〜」

と言うが、間違って捨てるような場所にゴミ箱はない。

それに我が家は綺麗なのだ。捨てグセのある母のおかげで。

 

捨てられたブラジャーは、C判定が出た店で購入したので、少しきつかった。だから捨てて正解だったとは思う。でも、娘の女性としてのアイデンティティまで葬らないで。

 

サカナクションで、『アイデンティティ

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