それでは聴いてください

好きなことを書いて無理やり曲紹介する

一週間の家出 <第1章>閉め出し

一週間、家出した。その経緯を綴る。


<某金曜日>
18時頃退勤。

1時間ほどぶらぶらし、19:00~20:00まで音楽スタジオに入って歌の練習をした。

20時半~22時半頃まで映画「ユリゴコロ」を観る。
23時前、駅のホームでスマホの電源を入れると母から無機質なLINEが。

「鍵閉めたから。家には入れないよ」

え?はい?


あ、帰りが遅くなるって連絡しなかったから怒ってるのね。これは閉め出しの刑だ。小さいころからよくやられている。ケータイも財布も持っていなかった幼き頃は玄関の前にただ立ち尽くすことしかできなかったが、今は逃げる術を持っているのが幸いである。

それと、鍵ではなくチェーンの間違いだろう。家の鍵は持っているがチェーンを閉められるとドアを開けられない。帰宅するまで1時間半程度かかるし、おそらくチェーンをかけたまま母は就寝する。家の近所には何もないし、家に入れないのならこのまま都内にいた方が無難だ。

 

ということで、オールすることにした。
都内で一人オールはちょっとこわいので誰かを誘おうと思い、私の家事情に理解がある友人4人にLINEで状況を伝えたが、都合が悪かったりうまく連絡が取れなかったりで、結局一人になった。

既に深夜だったので、隙を見せないよう周囲を警戒しながらカラオケ店へ入り、フリータイムで入室。食欲があるんだかないんだか自分でもよくわからない状態ながら、ラーメンとウーロン茶を注文する。深夜に一人でカラオケに来て、ラーメンを注文する女。店員に寂しい奴だと思われてるんだろうな、あの人何があったんすかね?とか言って裏で笑われてたら嫌だなーとか思いながら、気を紛らわすために明るい曲を転送する。

 

これとか。相川七瀬「夢見る少女じゃいられない」

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前の職場で先輩方にカラオケへ連れて行かれ、この曲を歌ったら「受理子フツーに歌うまい。」「ビブラートすげえ」 と褒められた。音楽をやっていることは職場では内緒にしていて、「いや、私、あんまり歌わないのでいいです・・・」とか大嘘ついた私に「歌いなよ。本当は歌いたい人でしょ。」と言ってマイクを渡してくれたN先輩、元気かな。

当時の職場には緩い師弟制度、一般にいうOJTがあり、私の『師匠』だったN先輩は「あたしの弟子みんな辞めていくんだよね~」とよくぼやいていた。違うんですよ、N先輩のせいじゃないんですよ、とは言えず、挨拶するタイミングすら逃したまま辞めてしまったのを思い出すと未だ心が痛む。

N先輩をはじめ、あの職場の方々のことを考えると、自分は実にくだらないなあと思う。自由なはずなのにいろんなものに縛られて。仕事とやりたいことがイコールではなくなり、稼ぐことだけを目的にバイトして一日の大半が終わる毎日と、居心地はいいけれど窮屈な家と、転機が来るかどうかも定かではない音楽活動と。

きっと誰かがいつかこの世界を変えてくれる 

そんな気でいたの

 そんな気でいました、はい。家閉め出されてるのにね。

 

もう自分の涙になんか酔わない

うん、自分でどうにかするしかないよね、家閉め出されてるしね。

 

次はこの曲。岩崎良美「タッチ」

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試験をやめて一秒教授(あなた)真剣な目をしたから 

そこから解答(こたえ)書けなくなるの留年ロンリネス

 とか歌ってみる。何がため息の数だけコピペレポートだよ。家閉め出されてるのに。

 

お願いタンイ タンイ ここにタンイ

教授(あなた)か~ら~~~

あの日取った単位返すから居場所ください神様。 

 

 

歌うのに疲れてきてからは、本人映像のある曲でMV観賞を始めた。こういうときは、歌えないけど好きな曲を入れるのが楽しい。

Ariana Grande「Problem ft. Iggy Azalea」

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なにが、

I got one less,one less problem

(=問題がひとつ減ったの)

だよ。家閉め出されてんだよ。むしろ問題増えてるだろ。

 

午前1時。注文したラーメンはすっかり伸びきっている。一番あてになりそうな友人も連絡が取れないし、もう終電がないから朝の5時まではここにいるしかない。

曲を転送するのも面倒になり、着ていたロングカーデをブランケットにして、横になってみる。カラオケの安っぽいソファを撫でながら、今日の今この瞬間を、あんな下積み時代もあったなと思い出すときが来るんだろうか、と思う。『シンガーソングライターJuRiの壮絶な下積み時代!』とかいう特集で「なんか家締め出されてえ、一人でカラオケオールしたんですよお。」なんて語っちゃったりするんだろうか。

「そんとき歌ってた曲ですか?『夢見る少女じゃいられない』です。夢見てましたけどね~アハハッ!」

 

時刻はまもなく午前5時、えぶりーたいむふぉーです。

午前4時50分、退室10分前を知らせる電話が鳴った。5時に一度閉店するらしい。

外に出ると、空はまだここに来た時と同じ色をしていて、およそ朝らしくない生暖かい空気が流れていた。オールしたのであろう若い酔っ払いがちらほらいるので、気を付けようと思っていた矢先、大学生くらいの男の子にさっそく絡まれてしまった。

 

「すいません!こんぐらいの、ペンギン見ませんでしたか?」

「は??」

「こんぐらいのぉ、ぺんぎん!」

「見てないです。」

 

やりとりが終わると男の子は自分がいたグループに戻り、グループの子たちにわらわれていた。ヤラセなのはわかってたけど、一体何の罰ゲームだったのか。

 

店はどこも午前五時でいったん閉めるようで、行く宛がないまま駅に向かった。

家のドアのチェーンはかかったままだろうから、帰れない。

以前、泊りに来ていいよと言ってくれていた友人もやはり連絡が取れない。どうしたものか。

考えた末、関西にいる親戚のところへ行こうと決め、私は東京駅へ向かった。

 

続く。