担任「あした服装検査~顏!」
少し前に話題になった「地毛証明書」だが、似たようなものが私の通っていた高校にもあった。
母校では「頭髪届」と呼ばれていて、癖毛や地毛の明るい人だけでなく、入学前に染めたりパーマをかけたことのある人も対象になった。
多かったのはストレートパーマ・縮毛矯正で、申請を出すと、順調に取れているか定期的にチェックされていた。
中には、3年間ストパーをかけ続けて地毛と見せかけたり、毎日髪をコテで巻いて「天パです」と言い張る強者もいたけれど、正直に申請する方が多数派だったと思う。(※地毛だと言い張る生徒に頭髪届けを求めるか否かの基準は先生によって違った。)
我が母校は自称、「個性を大切にする学校」だったのでチリチリ天然パーマも、元から明るい地毛も、ぼさぼさの眉毛もすべて、“ありのままの個性”として大事にするというスタンスを取りつつ、標準から離れていると疑いをかけてくる、ちょっと恐い学校だった。
定期的に服装検査も行われた。検査は大きく2種類あり、一つは制服のしわなど服装面、もう一つは頭髪や眉などの顔面だった。
必ず、前週か前日に担任の先生から告知される。
「あした~服装検査!顔!」
服装検査、顏。化粧禁止条例によりすっぴん状態で服装検査、顏。
何を見られるのかは分かっていながらも、ブスとか言われたらどうしようと毎回怯えてしまう。が、むしろブスの方が褒められる空気ではあった。
チェック項目はたしか、頭髪と眉毛だったと記憶している。うちの学校はとにかく、眉毛も頭髪も、元の形や素材を変えることが固く禁止されていた。みんな大好きヘアアイロンも使用禁止。(ヘアアイロンは休日でさえ使用禁止だったが、さすがにそれはだれも守っていなかった。)
ということで、「服装検査 顏」では以下の項目がチェックされた。
・前髪は目にかかっていないか、むやみに触角を出していないか
・眉毛を剃っていないか(※つながらないように真ん中だけは剃っていいらしい)
・髪を染めていないか、もしくは黒染めしていないか
・パーマorストレートパーマをかけていないか
・ヘアアイロンを使っていないか
等
前髪というものは必ず丸みを帯びて浮いているものだが、服装検査では浮いた前髪を手で潰した際の長さがチェックされた。潰して目にかかる長さなら、カットするか、ヘアピンで留めることを命じられる。厳しい先生だと翌日または翌週に再度チェックする。当時は「オン眉」なんぞ流行っておらず、グレーゾーンの長さの生徒がとても多かった。今でいう、「ウザバング」に近い。
また、肩につく長さの髪は結ぶ規則になっていたのだが、むやみに触角を出すのは禁止だった。この年頃の女子は、髪をきっちり結んで顏のラインを出すことをとても嫌がり、前髪のサイドの髪、通称「触角」を出す傾向が強い。しかし服装検査のときだけは皆、触角をしまう。前髪を切り忘れた子は普段ゆるく付けているヘアピンを強める。クラスの大半の髪型が変わる。もう一目瞭然だ。一度、担任の先生(男性)がクラス全員の顔を見て笑いながら言ったことがある。
「あれえ?みなさんどなたですかぁ?クラス間違えちゃったかな~?」
暗黙の了解で、教師を含む誰もが気づかぬふりをしてきたことだった。女の教師だったらまず言わない。服装検査用の髪型で服装検査に挑むなんて、こんな茶番劇、何のためにやるんだろうかと常々疑問だったが、先生もそう思っていたのかもしれない。
この服装検査により、新たな冤罪が生まれたりもする。地毛が、ドがつくほどのストレートでサラサラな子は、ストパー容疑やヘアアイロン容疑をかけられる。「サラサラ過ぎておかしい!」と。“個性”を大事にするんじゃなかったのかよ!!
また、日焼けにより毛先が傷んで色が抜けていると「〇センチ切りなさい」と指示される場合もあった。
眉毛の方は、元々薄かったり、整っていたりすると、剃ったと見なされるリスクがあったが、こちらは頭髪ほどシビアではなかったと記憶している。私はけっこうな太眉で、派手にいじったこともあったが、元が太いため少し細くなったところで不自然さはなく、特に何も言われなかった。ある友人は、あまりにもボーボーなケジ眉で、別の意味でのナチュラルさを先生に苦笑いされたという。(何が“身だしなみを美しく”、だよ。ボーボーじゃ美しくねえよ!と当時思っていた。)
一方、本物の違反者もわずかだが存在した。休暇中などにこっそり髪を染め、黒染めして登校してくる猛者が学年に1人はいるのだが、この学校の先生はFBI並みに目が鋭いから黒染めは一発で見抜かれる。下される制裁、それは、「染めたところがなくなるまで切る」というもの。とはいえ、女子の丸刈りも禁止されているから、学校が許す範囲で少しずつ切っていくらしい。AKBかよ、と今になって思う。
心の中の平井堅は言う、校則違反を「ソレデモシタイ」と。
ちなみに髪型も決まっており、入学時のオリエンテーションで、「次の8通りのいずれかで結んでください」と書かれた紙を配られた。校則に関する話はキリがないので、別の記事でちょこちょこ紹介していく。