それでは聴いてください

フリートークからの曲紹介に繋げるラジオ形式のブログ

あの日飛び出したこの国と安倍が正しかったのにね

豊島ミホの『ハニィ、空が灼けているよ』という短編小説がある。現代の日本が戦争をしている設定になっており、巻末の解説では“架空”の物語だと言及されているが、この小説を収録した短編集「青空チェリー」(新潮社)が出版されてから10年以上が経過した現在、読み返してみるとただのフィクションだとは思えない。

有り得ない設定におけるリアルな描写がこの小説の魅力だが、近いうちにただの日常系小説と化してしまうのではないか、という一抹の不安が頭をよぎる。

 

2年前、SEALDsという学生団体が安保法案反対デモをしていた。

最初は彼らのことを「意識高いねーがんばってるねーww」と面白がっていたが、ふと冷静になって考えてみたときに、たしかに戦争は嫌だなと思った。第二次世界大戦の頃とは時代が違うが、戦争が起きたら何らかの形で日常に支障が出るだろう。私たちは、少なくとも私は、便利な生活に慣れてしまっている。夏は涼しく、冬は暖かく過ごしたいし、お風呂は毎日入りたいし、好きな時に好きなものを食べたい。暇さえあればデータ通信料を気にせずにネットサーフィンやゲーム(ツムツムとスヌーピーパズル)やりたい。肌が弱いから月1で必ず皮膚科に行って塗り薬と保湿剤をもらいたい。

こういう日常が徐々に壊れ始めるだろう。どの程度かはわからないけども。

あくまで個人的な想像だが、3.11発生後の全国的な節電政策のようなことが、いくつも行われるのではないか。

 

そう考えるとむしろ、SEALDsを応援したくなった。戦争嫌だよね、戦争ができる法律なんて作ってほしくないよね、と。違憲だとかそんなことはただの口実で、単純に「戦争は嫌」というだけの、意識の高さのかけらもない思いが私の中にあった。

 

SEALDsに限らず、安保法案に反対していた人々の一部は私のように、「戦争は嫌」という個人的な感情が先行しながらも、そこに憲法9条の解釈の仕方に問題があるとか理由を後付けしていたのではないかと勝手ながら思う。

 

もちろんそうではなく、最初から論理的な理由しか持ち合わせていない人もいたかもしれない。しかしどうも、反対運動を見ていてると感情ばかりをぶつけているように思えて仕方ない。SEALDsメンバーのように若いと、更にその傾向が強くなる。ただSEALDsの上層部には高学歴な学生がいて、なまじ賢いから、自分の持っている知識や教養やそれらに対する見解などを述べて、感情論じゃなく、あたかも論理的に言っているかのように見せている。彼らの香ばしさはそういうところから生まれるのではないだろうか。

 

SEALDsは、安保法案が強制可決されてまもなく解散した(たしか)。

 

そして先月、新宿で大規模な安倍政権反対デモを見た。「共謀罪反対」とか、「こんな人たち」などと書かれたプラカードを掲げて様々な年齢の人たちが「あべはーやめろ!」と叫んでいた。

 デモ用の車に乗り、DJに合わせて「アベはーやめろっやめろっやめろっ♩」などとラップしている若者もいた。

 (デモの様子↓)

youtu.be

後で知ったが、元SEALDsメンバーも参加していたそうだ。ラップはおそらく彼らの名残だろう。

車が通り過ぎると若い見物人が「超ウケるー!サイコー!」と野次を飛ばしていた。

 

私はというと、ラップがかっこ良かったので、いいぞもっとやれ!と面白がっていた。

安倍政権には賛成でも反対でもないけれど、何百人もの人と団結して何かに反対する、叩くというのは楽しそうだと思ったからだ。その不謹慎な感情は、彼らが「安倍は辞めろっ」とストレートなセリフを発するのを見る度に強くなった。

 

デモというのは短い言葉しか言えないからだろうか、彼らからは安倍政権に反対する具体的な理由がほとんど聞こえなかった。行進が終わった後に別途演説をしていたようだが、行進だけを見るとただ感情をぶつけているだけにしか見えないのだ。

 

だからと言って反対派の人たちが間違っているとは思わない。

面白がって傍観している私は安倍政権を否定することも肯定することもできない。何が正しいのか分からないからである。社会の授業で習った程度の基本的な知識はある。安保法やテロ等準備罪を成立させた理由も理解はできる。どちらも、簡単に言えば国民を守るためだ。しかし、その裏に別の目的があるのではないかと疑ってしまう人が一定数いる。それが反対派だ。

「自衛の強化とか言ってほんとは戦争したいだけじゃないの?」とか、「テロの脅威云々じゃなくて国民を監視したいだけでしょ」とか、考えてしまう。ただそれらはあくまで主観的な、感情論に過ぎない。

 

安倍さんも人間だし、政治家一家の生まれだし、少なからずエゴはあるだろう。しかし国民を苦しめることは、自分の首を絞めることでもあるし、そこまでしてエゴを突き通すだろうか?

本当の事情はわからないが、強制可決をするあたり、焦っているようにも思える。近隣(特に北の方)は最近ずっとご機嫌斜めだし、日本が最早安全ではないと確信したからだろうか。だとしたら、何となく筋が通る気がする。

 

たしかに安倍さんは戦争したいかもしれない。国民を監視したいのかもしれない。

親友の経営する学校に獣医学部を新設するために手助けしたかもしれない。

違ったとしても、政治家なんて布団と同じで、叩けばいくらでも埃が出るだろう。

 

昨日とうとう、ミサイルでJアラートが鳴るまでになった。この状況で日本を動かせるのは、少なくとも今は安倍さんしかいない。安倍さんが一番総理大臣に相応しいとは言い切れないが、今は内輪で感情をぶつけ合っている場合じゃない。

 

もし安保法案が可決されず、無防備な状態のまま攻撃を受け、日本でもう暮らせなくなったとしたら、きっとこう思うだろう。

 

あの日飛び出したこの国と安倍が正しかったのにね

 

椎名林檎で、「正しい街」。

www.youtube.com

 

青空チェリー (新潮文庫)

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